【コラム】ネバーエンディング・ストーリーのテーマ(羽賀研二)/嗚呼、すばらしき珍盤たちよ… vol.01

唖然呆然、驚愕絶句。一度聞いたら耳から離れない、灰汁の強〜い珍盤・迷盤を紹介するこのコラム。今回ピックアップするのは羽賀研二の『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』。(ピストン藤井)





ネバーエンディング・ストーリーのテーマ


みなさん初めまして。好きなスイーツはなまこ酢、好きな男性のタイプは向井理よりも向井万起男のピストン藤井と申します。退屈な日常で疲弊したアナタの心を更にささくれ立たせる迷曲、浮かれ気分のアナタの心に思いっきり水を差す珍曲。聞きたくないのに耳にこびりついて離れない、そんなスッポンのようなナンバーを紹介するコラムへようこそ。

記念すべき第一回目は、世界中で大ヒットを博した1984年のSFアドベンチャー映画、そのテーマ曲を日本語カヴァーした『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』です。昭和生まれなら誰もが知っている原曲は、80年代を代表するイギリスの一発屋アイドル・グループ、カジャグーグーのヴォーカルだったリマールが歌っております。キラキラ80年代全開のシンセサイザーと、スウィートな歌声、高揚感をあおるポップなメロディーで構成された楽曲は、映画の世界観とも相まった珠玉の出来栄え。

そんな名曲に果敢に挑んだ猛者が、我ら日いづる国の誠意大将軍・羽賀研二(旧芸名・健二)です。字面だけですでに香ばしさが漂いますが、しかしイントロが日本人の魂を揺さぶる『愛燦燦』風アレンジで予想外にイイ! もしかして名曲か?という気がした次の瞬間、「♪よ~せよ~強がりは~ぁあ~俺のま~えで」と元祖チャラ男の下半身ゆるゆる口説き文句が滑り込みセーフしてしまい、あ、やっぱり気のせいだったと痛感させられます。



たしか原曲は“夢の世界へ旅立とう”的な素敵にファンタジックな世界観だったはずですが、羽賀バージョンは安いピコピコのシンセをBGMに、「照れた男のジグザグを分かってくれ」「イイネ燃え尽きても俺と明日」と、自称ジゴロの勘違い伝説というか、二股がバレたヤリチンの言い訳というか、よくわかんない歌詞が続きます。

当時、いいとも青年隊でブレイクし、イケメン・ハーフとしてアイドル街道まっしぐらだった羽賀青年。しかしその後、とち狂って梅宮アンナとヌード写真集→巨額の借金発覚→梅宮たつ兄が大激怒→誠意大将軍就任→桜庭あつ子に性癖バラされ、どぼちてどぼちて~→唐突に宝石屋→詐欺事件で大目玉、といったロマン溢れる栄光の歴史を築き上げることになるので、「俺も転がって生きてきたぜ」「滅びることが怖くない」とのたまうこの曲は、ある意味で、羽賀青年のライク・ア・ローリングストーン人生を暗示する壮大な予知曲とも言えます。

彼女との初デートや、残業で疲れたとき、受験勉強に励むとき、きっと羽賀青年の甘ったるく腹黒い歌声が、アナタの背中をそっと違うほうへ押しすぎてムードを台無しにしてくれることでしょう。狂おしいほどに胸ヤケする、Jポップ史に燦然と輝く迷曲です。


ネバーエンディング・ストーリーのテーマ
歌手:羽賀研二
レーベル:東芝EMI
発売年:1985年


ピストン藤井/富山発ブログ「郷土愛バカ一代!」主宰。東京で某プログレ雑誌のデッチ奉公するも、婿を求めて帰郷。いまだ白馬に乗った婿は現れず。


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