【コラム】入荷して一冊も売れなくても良書というものはある/我楽多見聞録 vol.05

「書物というのはポケットに入れて持ち歩ける庭のようなものである」。そんな格言もあるように、読む人間によって価値がゼロにもヒャクにもなるのが本のいいところ。文苑堂スタッフの推し本コラム。(ササキアイ)





伊藤潤二傑作集 富江(上・下巻)/伊藤潤二


毎日のように本が出版され、売れるものは長く店先に残るが、そうでないものは一ヶ月もしないうちに返品されていく。その残された本も一部を除いては三か月、半年、一年で返品され、よほどのベストセラーにならない限り長く人の目にふれることすらない。

しかし、長く店先に残らなくても、入荷して一冊も売れなくても良書というものはある。かつ多くの人に受け入れられなくても一部には大人気!という本もある。そんな本を紹介せずして連載やってる意味無し!ということで今回は思いっきり趣味に走った本(漫画家)を紹介します。

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伊藤潤二は分類するとホラー漫画家。代表作「富江」は何度も映画化されています。朝日ソノラマで出たコミックスが最近朝日新聞出版から傑作集として出しなおしされました。私は以前、店舗勤務だった際にこの朝日ソノラマの伊藤潤二コレクションを全店並べてフェアをしたことがあります。結果、一冊も売れなかったのですが…。

なんせ表紙がもう怖いのである。画力がありすぎて怖すぎるのだ。登場人物が友人、親戚、隣人に似ている、と感じることすらあるだろう。伊藤潤二ファンの間での人気キャラ「淵さん」にいたっては某ハリウッド女優に似ている。淵さん本人かと思うとおそろしくて私はSATCという海ドラが見られない。気になった方がいたらぜひぐぐってみてほしい。(とここまで書いて気になったので自分でも検索してみたらなんとYAHOO知恵袋に同士がいた)

伊藤潤二は日常と紙一重の恐怖を書くのがうまい。そしてラストに希望などもたせない。最初から最後まで徹底的にホラー。だからこそドキドキが持続して気がついたら病みつきなのである。せっかく出し直しされましたので、この機会に本屋さんで見かけた方は購入されることをおススメします。


伊藤潤二傑作集 富江(上・下巻)
著者:伊藤潤二
出版元:朝日新聞出版


ササキアイ/株式会社文苑堂社員。現在は企画担当。婚活パーティーなども開催している。


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