
KAGEROU/齋藤智裕
俳優・水嶋ヒロ ポプラ社小説大賞受賞。2010年、年の瀬にえらいものがふってきた。連日の報道で話題性は十分。内容がわからないまま売れることがもうすでに約束されたような1冊だった。個人的に話題先行で売れる本に関してはいつもジレンマがある。
【売れればいいのか】
本屋としてそのスタンスは本当に正しいのか。もちろんお客様が何を買うかは自由で、何をおもしろいと感じるかもその人の感性だ。それでも話題先行の本にどう関わっていくのがよいのか、答えはまだみつからない。だから今回は読む前につい願ってしまった。
「勝て、水嶋ヒロ」
読んでもいないのにおもしろくないと騒ぐ人。色眼鏡をかけたまま読んでしまった人。本当はこの本の中身なんて興味ないのに騒ぐマスコミ。この全てに勝って、小説を書いてまで伝えたかったことを、今後も伝えたいことを好きなように伝えていって欲しい。
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もちろん新人さんなのでまだまだ「うまい!」という点は少なく、伏線回収も不十分と感じる。【伝えたかったこと】がちゃんと伝わるような話であったか、その工夫はされていたか、という点においても物足りない。
しかし設定はよかったので、次回もっと掘り下げて、短編集でも出してくれたらなあ、と一人の読書家としてお願いしたい。最後に初版には誤植部にシールが貼られているが、あまりにもうまい誤植なのだ。この誤植も含めて、「KAGEROU」おもしろかったです。
KAGEROU
著者:齋藤智裕
出版元:ポプラ社
ササキアイ/株式会社文苑堂社員。現在は企画担当。婚活パーティーなども開催している。