
入善ラーメンまつり

さて、「富山ブラック」である。富山市呉羽で腹ペコ野郎どものハートを掴み続けた伝説の店『龍豊』の細切れチャーシュートッピングに追憶の涙を禁じ得ない筆者ではあるが(系譜を受け継いでいるのは『万里』であろうか)、ここは先ずあまたある中でも最も暴力的な辛さで棋界をリードする(男塾)筆頭の『西町大喜 本店』を避けて通ることは難しい。
店内に一歩足を踏み入れると、ウナギの寝床もかくやと思われる店内の壁にはおびただしい数の春画が以前は飾られており、「ほほう、喜多川派ですかな」と歌丸師匠も思わず膝を打つ耽美派の世界が現れていた。世が世ならカン・サンジュンも日曜美術館で紹介したことだろう。惜しい。
そして現在は定かでは無いのだが、店内の奥には全長60センチほどのミニチュア大砲が鎮座ましましており、その上に荷物を載せようものなら血相を変えた店員に3秒以内に撤去される。
参加店舗など詳しい情報はコチラ|http://www.nyuzen.jp
常連は入店と同時に「小・大・特大」かを素早く告げる。『ラーメン二郎』のマシマシコール同様、客には絶妙の間合いによるオーダーが求められ、躊躇した一見客は常連の「ケッ、ロット崩しかよ。」のずるむけ嘲笑ビームを背中で受けることになる。
中太の麺にメンマ、並々とした刻みチャーシュー、デフォルトの粗挽きコショウ、そして漆黒のスープ。このスープは大阪『金九右衛門』の「大阪ブラック」とも京都の『新福菜館』とも違うのである。めまいがするほど辛い。
しかし、都会人に向けて洗練された一連のインスタント「富山ブラック」製品を、私たちは支持できない。この味が富山県民の「誇り」なのである。
トッピングの生玉子は「狂い咲きTOYAMAブラックロード」の掟(ポルシェ)によって邪道とみなされ、当然、スープは完飲すべし。食事中の水補給もご法度。そして店員に対するアームロック(by五郎)も禁止である。
松任谷由実や一青窈らを虜にしたこのラーメンは、不朽の名作グルメマンガ『包丁人味平』においてカレー将軍・鼻田香作が放った「ブラックカレー」さながらである。汗と鼻水にまみれて不乱に貪り喰らうであろう彼女たちは、翻弄された社長令嬢・梨花や大吉なのである。
(ちなみに筆者は本編に登場する「マイク・赤木」は後の『美味しんぼ』における「谷井副部長」と縁戚関係にあると固く信じている。更に言及するとこれらのモデルは「松鶴家千とせ」に違いないTRASH-UP!!!)
第12回 入善ラーメンまつり
日時:2012年2月18日・19日 午前10時〜午後4時(19日は午後3時終了)
場所:入善町全域(メイン会場は『うるおい館』前特設会場)
問い合わせ先:0765-72-0170(入善町商工会青年部)
URL:http://www.nyuzen.jp
島倉和幸/1969年富山県生まれ。USTREAMサイト「tommune」所属。TwitterIDは@shimac01